「オール歩合給」は可能か?(2)(会社と相続ニュース No.22 2023年11月号)

「オール歩合給」は可能か?(2)

1 時代は「オール歩合給?」

 本ニュースNO.20 で「運送業『オール歩合給』は可能か?」と題する記事を掲載しました。多くの反響をいただき、関心の高さを実感しました。そこで、本稿では、オール歩合給にあたって検討すべきことを見ていきます。

2 労働基準法も「オール歩合給」を予定

 実は、労働基準法(以下、単に「法」と言います。)に、オール歩合給を予定した条文があります。

 法第十二条一項

 この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。

一 賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十(以下略)(注:ここでいう「請負」とは一定の成果に対し賃金を算定する賃金支払方法を言い、民法の「請負」をさすものではありません。)

 このように賃金を出来高払制とすることを予定する条文があるのです。

3 出来高「ゼロ」だと、歩合給も「ゼロ」?

 例えば、小売店の店長を「オール歩合給」としたとします。「今月の売上がゼロだから、給与もゼロ」とすることは、可能でしょうか。

 結論は、「不可」。最低賃金法に抵触するからです。店長(労働者)の労働時間に対して最低賃金を乗じた金額を下回ることはできません。したがって「ゼロ」はダメ、ということになります。(法定時外労働があれば、割増賃金も必要になります。)

 ところで、少し脱線します。最低賃金は2種類あることをご存じでしょうか。有名なのが「地域別最賃金」。この他に、「特定最低賃金」があるのです。奈良県では、機械、自動車小売、木材・家具製造等の業種ごとに最低賃金が定められています。

4 最低賃金をクリアしても、「保障給」

 最低賃金をクリアしさえすればOKという訳にはいきません。

 法第二十七条

 出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。

 「最低賃金」=「保障」ではない、ということに注意が必要です。ここで問題となるのが「では、保障はいくら払うことにすればいいのか」。これについて実は法令の定めがないのです。どのように考えればよいか。参考となるのが、休業手当(法二十六条)。休業手当は平均賃金の60%以上です。休んでも、平均賃金の60%が確保されるのですから、歩合給(出来高払制)でも同程度とするのが目安となるでしょう。(「注釈労働基準法・労働契約法第1巻」(有斐閣))

 また、少し脱線を。「平均賃金」と「通常賃金」の違い、ご存じでしょうか。平均賃金は賃金を「暦日数」で除したもの。「通常賃金」は賃金を「実労働日数」で除したもの。法律用語は難しいですね。

5 罰則

 「保障」は、就業規則や労働契約等で「明記」しておかなければなりません。「払えばいい」というものではないことに注意が必要です。30万円以下の罰金に処せられることがあります(法百二十条一号)。

6 働きがい

 藤木が会社員をしていた頃を思い出すに「出来高払」はモチベーションに効果的だと感じます。機会があれば、引き続き「オール歩合給は可能か?」検討したいと思います。

執筆:弁護士 藤木秀行

【ナラハQ&Aコーナー】不倫と財産分与

Q 

妻が不倫をして、私と子どもを置いて家を出て行ってしまいました。妻と離婚したいと思っているのですが、妻に財産分与せずに離婚することはできますか。

 

A 

離婚に伴う財産分与は、清算的財産分与(婚姻中の夫婦共有財産の清算)、扶養的財産分与(離婚後の経済的弱者に対する扶養料)、慰謝料的財産分与(相手方に対する慰謝料)の3つの要素が主に含まれていると言われていますが、その中心となるのは清算的財産分与です。したがって、たとえ妻の不倫が原因で離婚することになっても、妻に財産分与せずにすむということにはなりません。もっとも、妻や不倫相手に対しては、別途、慰謝料を請求することができます。詳しくは弁護士にご相談ください。

回答:弁護士 田辺美紀
■ コラム ■

~待ち遠しい春~

 最近妹が懐妊しました。結婚してから4年、ついに孫の顔が見られると、私の親も大喜びです。

 まだ見ぬ新しい家族のために、あれがいる、これもいる、こんなこともしてあげたいと、それぞれが待ち遠しい気持ちでいっぱいです。

 当の妹本人は、悪阻など体調不良になやまされており、とても大変そうです。食いしんぼうの妹がほとんど好きなものを食べられず、さぞ辛いとは思うのですが、どこか嬉しそうで、楽しみの方が勝っているのかなと窺えます。

 私も、生まれてくる子にいろいろ買ってあげたい、いろいろなところに連れて行きたいと、誕生の日を待ちわびています。

 もう、いまから伯父バカ確定です。

執筆:弁護士 有年孝将

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