改正労働施策総合推進法等:事業主の留意点(会社と相続ニュース No.47 2026年3月号)

改正労働施策総合推進法等:事業主の留意点

1 はじめに

 令和7年6月4日、労働施策総合推進法等が改正され、同月11日に公布されました。

 多様な労働者が活躍できる就業環境の整備を図るため、カスハラ、求職者等へのセクハラ等のハラスメント対策の強化、職業生活における女性活躍の推進、治療と仕事の両立支援の推進等の措置を講ずるものです。

2 改正の概要

 主な内容は、以下のとおりです。

(1)ハラスメント対策の強化

A カスハラ(①職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業の関係者の言動であって、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③当該労働者の就業環境を害すること)防止のため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務付けること

B 就職活動中の学生やインターンシップ生をはじめとする求職者等に対するセクハラ(いわゆる「就活セクハラ」)防止のため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務付けること

C 何人も職場におけるハラスメントを行ってはならないことを法文上明確にした上で、社会においてそうした規範意識を醸成するために、国が周知・啓発に取り組む旨の規定を設けること

(2)女性活躍の推進

D 「男女間賃金差異」及び「女性管理職比率」の情報公表を、常時雇用する労働者の数が101人以上の事業主に義務付けること

E 女性活躍推進法の有効期限(令和8年3月31日まで)を令和18年3月31日まで、10年間延長すること

F 女性の職業生活における活躍の推進に当たっては、女性の健康上の特性に配慮して行われるべき旨を、女性活躍推進法の基本原則に追記すること

G 女性活躍の推進に関する取組みが特に優良な事業主に対する特例認定制度(プラチナえるぼし)の認定要件に、求職者等に対するセクハラ防止に関する措置の内容を公表していることを追加すること

(3)治療と仕事の両立支援の推進

H 事業主に対し、職場における治療と就業の両立を促進するために必要な措置を講じる努力義務を課すとともに、当該措置の適切・有効な実施を図るための指針の根拠規定を定めること

3 改正の留意点

 A、Bについて、事業主が講ずべき具体的な措置の内容等は、今後、指針(厚生労働大臣告示)等において示される予定です。労働政策審議会においては、①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発、②相談体制の整備・周知、③ハラスメント発生後の迅速かつ適切な対応等について、指針等で示されるべきであるとされています。

 特にカスハラについては、令和4年2月に策定された『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』において、理不尽な要望を繰り返すなどするカスハラに対しては、窓口を一本化して今後同様の問合せを止めるように伝えて毅然と対応する、状況に応じて弁護士や警察への相談等を検討するなどの具体的な対応例がすでに示されています。

 なお、顧客等からのクレームの全てがカスハラに該当するわけではなく、A①~③の定義に当てはまらない、いわば「正当なクレーム」はカスハラに当たらないことには留意が必要であり、カスハラ対策を講ずる際には、消費者の権利等を阻害しないものでなければなりません。さらに、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供義務を遵守する必要があることにも注意が必要です。

 施行日(予定含む)

 以下のとおり、段階的に施行されます。
 C、E、F:公布日(すでに施行)
 D、H:令和8年4月1日
 A、B、G:公布後1年6か月以内の政令で定める日

5 おわりに

 カスハラの相談件数の増加、過去にカスハラを受けた労働者及び就活等をしている中でセクハラを経験した者の割合が高いという状況、高齢者の就労増加や医療技術の進歩等を背景に何らかの疾病を抱えて通院しながら働く労働者の割合が上昇傾向にあることは、近年の顕著な傾向です。

 これに対し、国、事業主、労働者、顧客等(カスハラのみ)の責務を明確化していくことが求められています。

執筆:弁護士 市ノ木山朋矩

【ナラハQ&Aコーナー】退職金と財産分与について

Q 

夫が2~3年後に定年退職予定です。私は夫との離婚を考えていますが、財産分与を請求する場合、退職前と後であればどちらの方が良いでしょうか。

 

A 

財産分与の計算では、退職前の場合、同居期間中の退職金見込額を基準にすることが多いと考えられます。退職後であれば、別居時に存在する額ということになります。
どちらが良いのかはケースバイケースですので、詳細については、弁護士にご相談ください。

回答:弁護士 一ノ瀬健伍
■ コラム ■

~受験生と我が家~

 我が家の4人の子どもたち。一番年上の長女は高校3年生、大学受験の真っ最中です。私からみて、受験生らしくない長女。勉強しなさいと言われるとプレッシャーになるので言わないで、と言われ、たっぷりの睡眠や遊ぶ時間に忙しくしている長女を見守ってきました(そのつもり)。昨年12月に入っても、長女がどこを受験するのか知らないまま(もちろん、私以外の家族も誰も知らない。)、、、。次男(中1)がやきもきして、「何や、あれ。小学生でももっと勉強してるぞ。」と長女に怒り。そうこうしているうちに、とうとう今年1月17日、18日の共通テストを迎えたのでした。テスト後、長女曰く、「人生終わった。」「詰んだ。」、、、。そして、突然、別の会話で弾んでいた長男(中3)の顔に、ペットボトルの水をぶちまけたのです。他方、私と夫はというと、「(夫)本人に本当はどうしたいか話聞いてあげないと。」「(私)そんなら、パパが聞いてあげたらいいやろ。」「(夫)だって、今さら、そんなの俺から言われても困るやろ?」「(私)えっ?なんで?」「(夫)だって、そうやって、すぐ俺のこと否定するやろ」「(私)???」。あらら、一人の受験生をめぐって我が家の絆が試されています。そんな中、長女にお願いされて落ち込む長女の頭をヨシヨシする、我が家のアイドル、末っ子三男坊(小4)。あっという間に、家族全員の絆を取り戻したのでした。

執筆:弁護士 田辺美紀


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