遺留分どこで揉める?(会社と相続ニュース No.40 2025年7月号)

遺留分どこで揉める?

1 遺留分とは

 遺留分とは、一定の相続人(遺留分権利者)について、被相続人(亡くなった方)の財産から法律上取得することが保障されている最低限の取り分のことで、被相続人の生前の贈与又は遺贈によっても奪われることのないものです。

 典型的には、遺言書が存在するケースで問題となります。

 例えば、父の遺産を、長男にすべて取得させる内容の遺言書が存在するような場合です。

2 遺留分権利者と遺留分の割合金

 遺留分権利者となり得るのは、兄弟姉妹以外の相続人、すなわち、配偶者、子(代襲相続人も含む)、直系尊属です(民法1042条1 項)。

 相続財産全体に占める遺留分権利者に留保される割合を総体的遺留分といいます。

 直系尊属のみが相続人である場合には、被相続人の財産の3分の1(民法1042条1項1号)、それ以外の場合には、被相続人の財産の2分の1になります(民法1042条1項2号)。

 遺留分権利者個々人に留保された相続財産上の持分的割合を個別的遺留分といいます。遺留分権利者である相続人が複数存在する場合、この個別的遺留分は、総体的遺留分の割合に法定相続分を乗じた割合になります(民法1042条2項・900条・901条)。

 例えば、相続人が、配偶者と子2人のケースでは、個別的遺留分の割合は、配偶者が4分の1(総体的遺留分2分の1×法定相続分2分の1)、子が各8分の1(総体的遺留分2分の1×法定相続分2分の1×2分の1)になります。

3 遺留分侵害額の請求

 被相続人が財産を遺留分権利者以外に贈与又は遺贈し、遺留分に相当する財産を受け取ることができなかった場合、遺留分権利者は、贈与又は遺贈を受けた者に対し、遺留分を侵害されたとして、その侵害額に相当する金銭の支払を請求することできます。これを遺留分侵害額の請求といいます。

4 遺留分侵害額請求権の行使と期間制限

 遺留分侵害額請求権の行使は、意思表示で足りますので、口頭ですることも可能です。

 しかしながら、遺留分侵害額請求権は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年を経過したときに時効によって消滅します。相続開始の時から10年を経過したときも同様です(民法1048条)。

 したがって、遺留分侵害額請求権は、配達証明付内容証明郵便を送付する方法により行使する必要があるでしょう。

5 遺留分侵害額請求で争いになるポイント

 遺留分侵害額請求において、特に争いになりやすいのは、生前の預貯金の払戻です。

 遺産分割とは異なり、遺留分侵害額請求権との関係では、被相続人の持戻し免除の意思表示があっても、特別受益を考慮して遺留分を算定をすることになります(なお、特別受益は、原則として相続開始前10年間にしたものに限り、遺留分算定の基礎となる財産に含まれます(民法1044条3項))。

 そのため、生前の預貯金の払戻が、被相続人から相続人に対する贈与等の特別受益に該当するか否か争われることが多くあります。

 このようなケースでは、取引履歴等を取得した上で、預貯金通帳やキャッシュカードの管理状況、払戻の時期、金額、使途を精査する等、生前の預貯金の払戻が特別受益に該当するか丁寧に検討した上で、主張していくことが必要となります。

6 最後に

 遺留分について疑問に思われることがあれば、お早めに弁護士に相談されることをお勧めします。

執筆:弁護士 金丸有希

【ナラハQ&Aコーナー】別居後の生活費

Q 

夫と離婚するかどうか、迷っています。まずは、夫と別居しようかと考えているのですが、生活費はもらうことができますか。

 

A 

婚姻中の夫婦には、婚姻費用の分担義務があります。これは、養育費と同様、自分の生活を保持するのと同程度の生活を配偶者にも保持させる義務だと解されています。もっとも、婚姻費用の分担を請求する側に、別居や破綻の原因がある場合などについては、請求される側の婚姻費用の分担額が減免されることがあります。詳しくは、弁護士にご相談ください。

回答:弁護士 市ノ木山朋矩
■ コラム ■

~サブスクの時代~

 最近、私が始めたサブスク(サブスクリプション)は「お花」です!

 花瓶に活ける花が月に数回、決まったペースで届きます。品種や色はお任せですので、何が届くか分からないワクワクがあり、また部屋に少しの彩りが生まれ、楽しい気持ちにもなります。

 サブスクと言えば、動画や音楽などの配信サービスが想像されることが多いかもしれませんが、これに限らず、最近はお花など様々な商品も人気があるようですので、お勧めのサブスクがあれば是非教えてください!

「お花」のサブスク
執筆:弁護士 林揚子


相談予約受付中 0742-81-3323相談予約受付中 0742-81-3323
メールによるお問い合わせは24時間受付
メールによるお問い合わせ
会社と相続ニュースバックナンバー

住所

〒631-0824 奈良市西大寺南町8番33号 奈良商工会議所会館1階
TEL 0742-81-3323 
FAX 0742-81-3324

電車

近鉄「大和西大寺駅」南側より徒歩3分。
近鉄「大和西大寺駅」の中央改札口を出て、右方向(南側)に進み、地上まで降ります。
バスロータリーから南に向かって直進し、一つ目の信号を越えた左手に「奈良商工会議所会館」のビルがあります。
その1階に弁護士法人ナラハ奈良法律事務所があります。

自動車

阪奈道路(高架下)から「菅原東」の交差点を曲がり、「大和西大寺駅」方面(北側)に向かって道なりに進みます。
「大和西大寺駅」南側のバスロータリーより一つ手前の信号の右手に「奈良商工会議所会館」のビルがあります。
その1階に弁護士法人ナラハ奈良法律事務所があります。

《駐車場について》
ビルの来館者用駐車場に空きがあれば無料でご利用いただけますが、空きがない場合は周辺のコインパーキングをご利用ください。


Copyright(c) NARAHA legal profession corporation. All Rights Reserved.