「終活」ことはじめ(会社と相続ニュース No.44 2025年11月号)

「終活」ことはじめ

1 はじめに

 「終活」という言葉、お聞きになったこと、ありますか?使う人によって意味が異なるようです。例えば、「遺される人に迷惑をかけないようにする活動」という意味で使われることもあるようです。

 本稿ではシンプルに「人生の終わりのための活動」という意味で用いることとします。

2 終活を考えるにあたり

 終活を考える際、悩まれるポイントは様々です。しかし、「自分の生前のこと」「自分の死後のこと」に分けると、考えやすくなります。そこで、本稿ではこの二つの観点から整理します。

3 自分の生前のこと

 老後が心配という相談、よく聞きます。しかし、この相談、実はお答えするのがとても難しい。なぜなら、ご本人様ご自身が「『何が心配か』が、そもそも分からない」から。「どんなことが心配ですか?」とお聞きしても、「将来、弱ってきたら、どうなるのかしら」とか「困ったことが起きたとき、どうしたらいいのかしら」といったような、漠然とした不安をお話することはできても、具体的な課題を掲げることができる方は、あまりいらっしゃらないのです。

 ただ、法的に用意されているメニューも、多くはありません。そこで、まずは法的に用意されているメニュー(法的にできること)を見てみましょう。

(1) 任意後見契約

 任意後見契約とは、本人が将来、精神上の障がい(認知症など)により判断能力(事理を弁識する能力)が不十分な状況になった場合に備えて結ぶ契約です。本人の判断能力が十分なうちに、将来の支援内容と支援を任せる相手(任意後見受任者)をあらかじめ契約で決めておく制度です。

 「後見人になってもらう人を選べる」という点で法定後見より優れていますが、「後見人の引受手」を見つけるのが難しいという難点があります。

(2) 財産管理契約

 財産管理契約は、委任者の財産の管理や処分、生活上の事務などについて、受任者に委任する契約です。委任者の判断能力が衰えていない段階から利用することができ、任意代理契約と呼ばれることもあります。委任できる内容は、主に「財産管理」と「療養看護(医療や介護などのサービスの利用に関する事務処理)」です。

 契約さえ締結すれば、いつでも開始することができる点で優れています。しかし、引受手を見つけるのが難しい点は任意後見契約と同じです。

 以上が代表的な法的制度です。他は、ご自身のニーズにあったサービスを探すということになります。

4 自分の死後のこと

(1) 遺言

 遺言とは、被相続人が生前に抱いていた最終的な意思を、その死後に実現させるための法的な効力を持つ公式な書類です。「遺書」と混同される方もいらっしゃいますが、遺書は家族へのメッセージなどを記す法的な効力のない書類です。

 遺言の種類については、本稿では割愛します。

(2) 死後事務委任契約

 死後事務委任契約とは、委任者が生存している間に、信頼できる受任者との間で自己の死後の事務処理を依頼する契約です。法律行為ではない事務を委任するため、法的には準委任契約に分類されます。親族と疎遠な人や身寄りのない人が、利用されることが多いです。例えば、ペットを愛護団体に預けてほしいとか、行政官庁へ死亡届など届出してほしいなどの事務行為です。

 内容的に遺言と抵触する事項が考えられますので、遺言とセットで検討するのが望ましいでしょう。

5 最後に

 上記で見たように、法的な制度は限定的です。現状では、ニーズにあったサービスを探すか、ニーズに応えてくれる人・会社を探すことが重要であると考えます。

執筆:弁護士 藤木秀行

【ナラハQ&Aコーナー】会社と離婚

Q 

夫は、婚姻後、会社を設立し、代表者となりました。
夫の経営する会社の財産は、財産分与の対象にはならないのでしょうか。

 

A 

夫と会社は、別の存在であり、第三者である会社名義の財産は、財産分与の対象とならないのが原則です。
もっとも、夫が所有する会社の株式は夫個人の財産として、財産分与の対象となり得ます。また、会社名義の財産が実質上、夫個人の財産と同視できるような事情があれば、財産分与の対象となる可能性があります。詳細については、弁護士にご相談ください。

回答:弁護士 金丸有希
■ コラム ■

~今年の秋は~

 夏の厳しい日差しも和らぎ、秋らしい過ごしやすい気候になりました。秋といえば「〇〇の秋」とよく言われます。

 皆さんは秋といえばどのような秋を思い浮かべるでしょうか。奈良は大和いもや柿など旬の味覚に恵まれ、食欲の秋を満喫できます。

 私は、仕事もプライベートも「実りの秋」にしたいと考えています。

 弁護士として4月に弁護士法人ナラハに入所した一ノ瀬という芽が、経験を積みながら成長し、豊かな実りを迎えることが出来るよう頑張っていきたいと意気込んでいます。また、趣味のカメラでも、自然豊かで多彩な表情を見せる奈良の風景を写真に残せるように練習をしていきたいと思っています。奈良のおすすめのスポットなどあればぜひ教えてください。

 最後に、藤原宮跡のコスモスを添えて秋の風情をおすそ分けいたします。

藤原宮跡のコスモス
執筆:弁護士 一ノ瀬健伍


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