民事裁判IT化へ(会社と相続ニュース No.6 2022年6月7月合併号)

民事裁判IT化へ

1 民事訴訟法等の一部を改正する法律が成立

 2022年5月18日、第208回通常国会において、民事訴訟法等の一部を改正する法律が成立しました。 この改正により、訴状等のオンライン提出、訴訟記録の電子化、ウェブ会議を利用した口頭弁論期日などが可能となります。

 また、本改正で、一定の期間内に審理を終えて判決を行う手続である「法定審理期間訴訟手続」が新設されました。但し、消費者契約に関する訴え及び個別労働関係民事紛争に関する訴えは除外されています。また、本改正で、「犯罪被害者等の氏名等の情報秘匿制度」が新設されました。

 これらの制度は段階的に導入され、2025年中の全面施行を目指すと報道されています。

2 民事訴訟手続のIT化の背景

 これまでの日本の訴訟進行は、①紙の訴状を裁判所に提出し、相手方に郵便で送達され、②裁判の日時には当事者や代理人弁護士が裁判所まで行き公開の法廷で審理が行われ、③紙の準備書面を郵送、FAXなどの方法で相手方と裁判所に提出し、②と③を何度か繰り返し、④裁判所に証人が出廷して証人尋問が行われ、⑤法廷で判決が言い渡され、紙の判決書が当事者に郵便で送達される、という流れが主でした。

 これに対し、アメリカ、シンガポール、韓国等では、IT化した裁判手続の運用が広く普及・定着しているほか、ドイツ等でも、IT化の本格的な取組が進展しています。

3 民事訴訟法等の改正に至るまでの流れ

 日本では、「未来投資戦略2017」(2017年6月9日閣議決定)において、「迅速かつ効率的な裁判の実現を図るため、諸外国の状況も踏まえ、裁判における手続保障や情報セキュリティ面を含む総合的な観点から、関係機関等の協力を得て利用者目線で裁判に係る手続等のIT化を推進する方策について速やかに検討し、本年度中に結論を得る。」とされました。これを受け、日本経済再生本部に設置された「裁判手続等のIT化検討会」が2017年10月から合計8回開催され、2018年3月に「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ」がなされました。

 この取りまとめの中で、「3つのe」の実現が目指されました。民事訴訟手続における①e提出(e-Filing主張・証拠をオンライン提出に一本化、手数料の電子納付・電子決済、訴訟記録を電子記録に一本化)、②e事件管理(e-CaseManagement主張・証拠への随時オンラインアクセス、裁判期日をオンラインで調整、本人・代理人が期日の進捗・進行計画を確認)、③e法廷(e-Courtウェブ会議・テレビ会議の導入・拡大、口頭弁論期日(第1回期日等)の見直し、争点整理段階におけるITツールの活用)の3つです。

 実現に向けたプロセスとして、3つのフェーズに分け、順次、新たな運用を開始していくアプローチが提唱されました。フェーズ1は現行法の下でのウェブ会議・テレビ会議等の運用、フェーズ2は新法に基づく弁論・争点整理等の運用、フェーズ3はオンラインでの申立て等の運用です。

 フェーズ2、3の実現に向けて、2020年6月から2022年1月まで法制審議会の民事訴訟法(IT化関係)部会で23回にわたる審議がなされ、今回の改正法案が国会に提出されることになりました。

 2020年から始まる新型コロナウイルスの影響は、このIT化を後押しする形となりました。

4 今後の課題など

 日本弁護士連合会は、2022年5月20日付で会長声明を出しています。

 国際的に遅れを指摘されていた裁判手続のIT化において、民事訴訟手続にIT活用の諸規定が整備されたことは大きな前進であると評価した上で、「本改正法の施行のためのシステムの開発・構築に際しては、情報セキュリティの確保、プライバシーや営業秘密の保護、ユーザビリティ(有効性、効率性、満足度)等の実現が図られなければならない。」としています。

 また、課題として、障がいのある人に対する手続上の配慮、訴え提起の手数料の在り方等は新たな法改正を含めた検討が必要であること、IT化を契機とした支部の統廃合など司法過疎が進む方向での議論は厳に慎むべきであること、IT化が非弁活動の温床にならないような制度設計が不可欠であることなどを挙げています。

5 まとめ

 今回の改正により、民事裁判のIT化がこれまで以上に急ピッチで進められ、従来の裁判の形が大きく変わっていくことでしょう。民事裁判のIT化にとどまらず、2022年3月、法務省は「ODRの推進に関する基本方針」を取りまとめました。ODRとは、デジタル技術を活用して裁判外紛争解決手続(ADR)をオンラインで実施するものです。

 今後、IT化の流れは様々な所で進んでいきますが、それに合わせ、具体的な紛争解決手段や方法について、新たな検討が必要となってくるものと思われます。

執筆:弁護士 田辺美紀
■ コラム ■

~自己紹介~

1 はじめに

no36

 林揚子と申します(よく間違えられますが「陽子」ではありません。)生まれは奈良で、大学、大学院は県外に通学し、和歌山での司法修習を経て、2013年に奈良市内で一人事務所を開業しました。その後約10年間、一人事務所でしたが、今回、縁あって当事務所に入所することとなりました。

2 私生活について

 夫、子ども(2021年1月生まれ)との3人暮らしです。

 趣味は野球観戦です。広島東洋カープを応援しています。試合に勝った日は余韻に浸りながら眠ります。子どももテレビの野球中継を一緒になって見ており、いいプレーがあって家族が拍手をしていると、一緒にぱちぱちと拍手をしているので、将来は立派なカープ女子になる予感がします。最近は何かと忙しく、現地観戦はできていませんが、将来、親子3代でマツダスタジアムに応援に行くのが目標です。

3 仕事のこと

 まずは、相談者、依頼者の方の気持ちに寄り添うことを大事にしています。

 お話を聞いているうちに、ついつい感情移入が過ぎ、客観的な物の見方を失ってしまいそうなこともありますが、そこは弁護士として冷静になり、調停や訴訟などを見据え、どのような手続きがベストかを見極めたうえで、適切な道筋をお示しすることを心掛けています。

執筆:弁護士 林揚子

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