18歳で成人に(会社と相続ニュース No.5 2022年5月15日号)

18歳で成人に

1 約140年ぶりに、成年年齢が見直されました

 令和4年4月1日、成年年齢が18歳に引き下げられました。明治9年の太政官布告以来の改正です。令和4年4月1日の時点で、18歳以上20歳未満の若者は、その日をもって成年に達したことになります。

 「え? お酒は? 競馬は? 成人式は…?」
お酒も、競馬も、年齢制限については20歳が維持されますが、民法上『20歳で成人』でなくなることの影響は、多方面に及びそうです。

 今回は、成年年齢の引下げに関連して、未成年者取消権、遺産分割協議・調停の当事者性、遺言能力、という3点について、ご説明します。

2 未成年者による取引、契約(未成年者取消権)

 このたびの民法改正により、「年齢十八歳をもって、成年とする」こととなりました(民法4条)。これが、未成年者の財産管理の局面で大きな意義を持つのは、民法5条・6条との関係です。

 「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人(=親権者や未成年後見人など)の同意を得なければならない」のが原則であり(民法5条1項本文)、同意を得ずになされた法律行為は、取り消すことができます(民法5条2項。「未成年者取消権」と呼ばれ、未成年者の消費者被害を抑止する役割を果たしてきました。)。なお、これには例外があり、「単に権利を得、又は義務を免れる法律行為」は除く(民法5条1項但書)、法定代理人が目的を定め、又は、目的を定めないで「処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる」(民法5条3項)、「一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する」(民法6条1項)、とされています。

 こうして見ると、例外はあるものの、原則としては、未成年者は、単独で取引、契約をすることができません。未成年者は、携帯電話を購入する、一人暮らしのためのアパートを借りる、クレジットカードを作成する(支払能力等の審査をパスできるかは別問題です。)、アルバイトをするといったことを、法定代理人の同意なく行うことが困難です。

 しかし、この制限が、18歳、19歳の若者について、解除されました。18歳、19歳の若者は、取引、契約において自由な存在となるのと引き換えに、未成年者取消権を行使することができなくなりました。今後、取引や契約の相手となる者は、18歳、19歳の若者と、これまでと比べて、積極的に取引、契約をしていくことが可能となりました。

3 未成年者による遺産分割協議・調停

 共同相続人の中に未成年者がいる場合には、法定代理人(=親権者や未成年後見人など)が未成年者を代理して、遺産分割協議・調停を行います。遺産分割も法律行為ですので、上記2項と同様、今回の民法改正により18歳から本人が行うこととなりました。

4 遺言能力

 民法は、「十五歳に達した者は、遺言をすることができる」(民法961条)、民法5条は遺言については適用しない(民法962条)、と定めています。身分行為たる遺言には、取引上の有利不利を理解する能力よりも低い程度の能力で足り、多少の損得よりも、死者の意思を優先しようとしていると説明されます。したがって、今回の民法改正による影響はありません。

5 まとめ

 以上のように見てきますと、民法は、若者の成長について、必ずしも成年年齢だけを重視しているわけではないことが分かります。15歳になれば、遺言などの財産の処分についての判断能力を一応獲得していると考えられているものの、社会的な経験量が決して十分でないのではとの配慮から、成年年齢までは、取引、契約に一定の制限を設けているといえます。この成年年齢が、20歳がいいのか、18歳がいいのか、はたまた15歳でよいのか、には様々な意見、議論がありうると思いますが、とにもかくにも、令和4年4月1日からは、民法上『18歳で成人』となりました。

6 弁護士だけ…?

 おわりに、成年年齢の引下げに伴い、年齢要件が18歳に変更された資格がありますので、ご紹介します。

 各法律を見ますと、医師免許(医師法)、歯科医師免許(歯科医師法)、獣医師免許(獣医師法)、薬剤師免許(薬剤師法)については【未成年者には、免許を与えない。】と、公認会計士資格(公認会計士法)、司法書士資格(司法書士法)、土地家屋調査士資格(土地家屋調査士法)、行政書士資格(行政書士法)、社会保険労務士資格(社会保険労務士法)、税理士資格(税理士法)については【未成年者は、□□士となる資格を有しない(□□士となることができない。)。】と、定められています。

 さて、弁護士は、といいますと、弁護士法には、このような、年齢による欠格事由の定めはありません。私的自治の原則、自己決定権、契約自由の原則、ひいては、生き方の選択の自由…。これらが最大限に尊重される社会の実現を、弁護士が身を以て体現している、ということでしょうか。

執筆:弁護士 市ノ木山朋矩
■ コラム ■

~おうちカレー~

 ご家庭の数だけバリエーションがあると言われる「おうちカレー」。今日は、おうちカレーの話をしましょう。

 藤木が食品メーカーでマーケティングをしていたときのこと。あるスーパーのバイヤーから、クイズを出されました。「一年のうちで、カレールウがもっとも売れるのは、いつか」。みなさまは、いつ頃だと思われますか?

 藤木は「真夏の暑い頃」と答えました。結果は、ハズレ。正解は「ゴールデンウィーク」。バイヤーいわく、「お出かけが増えるので、お手軽なカレーが選ばれる」とのこと。そうなのか。当時は料理をしなかったので、分かりませんでしたが、たまに料理をする今では、カレーを選ぶ気持ち、分かります。

 おうちカレーと言えば、隠し味。アンケートをとってみました。ケチャップ、ウスターソース、チョコレート、昆布茶、インスタントコーヒー、にんにく、ヨーグルト、はちみつ、トマトなどなど。いろいろな流派がありますね!みなさまのご家庭では、なにを入れますか? ちなみに、藤木は「入れません」。食品メーカーの矜持、意図された味の再現を目指します。

 入れるお肉は、牛肉派? 豚肉派? 鶏肉派? それともベジタリアン? お客様に教えてもらったことがあります。「カレー用牛肉ではなく、ステーキ用牛肉をサイコロ大に切って入れたら、おいしいですよ」。やってみました。なるほど、おいしい! 牛肉のとろみがルーに溶け込み、芳醇です! でも、次は、ステーキとしていただくかな。

 最後に、カレーのとろみのtipsを。以前、藤木がカレーを作ると、シャバシャバになっていました。原因は、ルウを投入するタイミング。ぐつぐつ沸騰した直後に入れると、とろみがつかず、シャバシャバになってしまうようなのです。とろみのポイントは粗熱をとってから投入すること。90度ほどに冷ましてから入れると、いいようです。

 でも、忙しい夕食時。90度に冷めるまで待てないときがありますよね。そこで、藤木の裏技。沸騰してから、水を入れるのです。具体的には、ルウの箱裏のレシピで「水750ml」とされているルウでは、「水600ml」で煮込み、レシピ指定の時間、沸騰後させた後、残り「水150ml」を入れて、粗熱をとるのです。

 時短になり、おすすめです!

執筆:弁護士 藤木秀行

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