法改正と契約書チェック(会社と相続ニュース No.18 2023年7月号)
- 2023年06月30日
- 会社と相続ニュースバックナンバー
法改正と契約書チェック
1 消費者契約法が改正されました
消費者契約法は、消費者と事業者との間で締結される消費者契約に関する民事ルール等を規定する民法の特別法です。消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、事業者の損害賠償責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とすること等により、消費者の利益の擁護を図ること等を目的としています。
近年の消費者契約を取り巻く環境の変化を踏まえつつ、消費者が安全・安心に取引できるセーフティネットを整備するべく、令和4年5月25日、「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、同年6月1日に、令和4年法律第59号として公布されました。このうち、消費者契約法の改正事項については、本年6月1日に施行されました。
改正事項は多岐にわたりますが、今回は、事業者が特に気を付けなければならない「免責の範囲が不明確な条項の無効」(第8条第3項)について、ご説明します。
2 免責の範囲が不明確な条項の無効(第8条第3項)
改正法第8条第3項の規定は、次のとおりです。
事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものを除く。)又は消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものを除く。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する消費者契約の条項であって、当該条項において事業者、その代表者又はその使用する者の重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていないものは、無効とする。
従前、消費者契約において、「法令に反しない限り、1万円を上限として賠償します」という条項を置くことは有効とされていました。事業者の責任を限定する範囲について、「法令に反しない限り」等の抽象的な文言を付記することで、当該条項が無効とされることを回避することが可能とされていました。
しかし、これでは、事業者の免責される範囲が不明確であり、結果として、消費者の事業者に対する賠償請求が困難になるという問題点が指摘されるようになりました。
そこで、改正法では、消費者による賠償請求を困難にする不明確な一部免責条項(損害賠償責任の一部免責条項が、軽過失による行為のみを対象としていることを明らかにしていないもの)は無効とすることが規定されました。
3 実務上の対応
本改正以降、消費者向けビジネスを展開している事業者が、利用規約等において、「法令に反しない限り」等の留保を付けて事業者の責任を限定する条項を使用している場合に、これまで通り、軽過失による行為について一部免責効果を得るためには、利用規約等を修正することが必要となります。
なお、消費者による賠償請求を困難にする不明確な一部免責条項は無効となることとされましたので、利用規約等における当該条項を修正することなく、運用レベルで個々の消費者ごとに対応するという形は認められません。軽過失による行為について一部免責効果を得るためには、利用規約等の修正が不可欠です。
今回の改正法のもとで、事業者の責任を限定する条項として無効となる例、有効となる例を、改めて以下にお示ししますので、ご参考にしていただけますと幸いです。
【無効となる例】
「法令に反しない限り、●●を上限として賠償します」
【有効となる例】
「軽過失の場合は、●●を上限として賠償します」
4 法改正と契約書チェックは、弁護士まで
法改正の追いかけと、それに基づく契約書・規約等の修正、改善。
リスクを回避し、使える契約書・規約等を作成、チェックすることは、弁護士の専門分野です。
【ナラハQ&Aコーナー】離婚後、子に会わせてくれない
Q
夫と離婚するに当たり、経済的な事情から、夫が子どもの親権者となりました。その後、夫が子どもに会わせてくれません。どうしたら良いでしょうか。
A
家庭裁判所に面会交流調停の申立をすれば、家庭裁判所の助言を得ながら、話し合いをすることができます。場合によっては、専門性を持つ家庭裁判所調査官が調停に入り、子どもの意向を調査するなどして、より良い解決を目指し、話し合いを進める手助けをしてくれます。
詳しくは弁護士にご相談ください。
~台風で出会った国立西洋美術館の1枚の絵~
先日、6月2日(金)、台風が来ているのを知りながら、東京まで日帰り予定の出張に行ってきました。訪問先の方が、途中、「大丈夫ですか?今、新幹線が止まったそうですよ。」と仰り、しまった!と思いつつ、「止まってしまったのなら、もう今さら帰れないですから。」と平静を装った私。訪問が終わり、急いで東京駅に向かったものの、既に新幹線は止まり駅は大混雑。ダメ元で高速バス乗り場まで行ったものの、大阪方面は運休だとつれない返事。やむを得ず、急遽、慣れない宿で一泊したのでした。翌朝確認したところ、新幹線が動きだすのは正午からとのこと。午前中に時間ができてしまったことから、久しぶりに(普段は子どもらが騒ぐので絶対に行くことのできない)東京上野の美術館に足を向けました。
国立西洋美術館に入館したのは実に約30年ぶり、1994年にバーンズ・コレクション展を見に行って以来ではないでしょうか。美術、絵画には疎い私ですが、今回、お気に入りの絵を1枚みつけてきましたよ。マリー=ガブリエル・カペの自画像。フランスの女性画家で、1783年頃、22才の時に描かれた作品です。初々しく自信に満ちた瞳や表情は、昨夜の台風とは対照的。インターネットで国立西洋美術館のページから検索してみると、絵全体が少し暗く見えるのですが、実物は晴やかで明るく、とても印象的です!