特別受益とは?(会社と相続ニュース No.35 2025年1・2月合併号)

特別受益とは?

1 相続人への贈与と特別受益

 亡くなられた方(被相続人)から、遺贈(遺言によって財産を譲り受けること)や贈与を受けた相続人がいる場合(住宅購入や営業資金のための援助等)、当該遺贈や贈与を無視して、遺産分割を行うことを不公平だと感じる方もおられるかと思います。

 民法では、相続人間の公平を図ることを目的として、次のように定めています。

 民法第九百三条(特別受益者の相続分)

 共同相続人中に、被相続人から、①遺贈を受け、又は②婚姻若しくは養子縁組のため若しくは③生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする(付番、下線追記は筆者)

 この遺贈又は贈与を「特別受益」といいます。「特別受益」に当たる場合には、具体的相続分の算定に当たり、計算上、特別受益相当額を加算することになります(特別受益の持戻し)。その結果、遺産分割において、特別受益を受けた相続人の相続分が少なくなる可能性があります。

2 特別受益に当たるか

 まず、遺贈により受遺者が受けた財産は「特別受益」に当たります。

 次に、贈与ですが、すべてが「特別受益」に当たるわけではありません。「特別受益」に当たるかどうかは、生計の資本としての贈与など、遺産の前渡しとみられるかどうかが基準となります。

 ここで、生計の資本としての贈与とは、居住用不動産の贈与やその取得のための金銭の贈与、営業資金の贈与など生計の基礎として役立つような財産上の給付をいいますが、具体的には、贈与金額の多寡、贈与の趣旨から判断されることになります。

 生命保険金は、受取人として指定された相続人が受領した場合には、原則として「特別受益」に当たりません。ただし、保険金の額、この額の遺産総額に対する比率等諸般の事情を総合考慮して、他の共同相続人との間で生じる不公平が著しいといえる特段の事情がある場合には、特別受益に準じて、持戻しの対象となるとされています。

3 持戻し免除の意思表示

 特定の相続人に多くの遺産を渡したいと考える方もおられるかと思います。このような場合には、被相続人は意思表示によって特別受益の持戻しを免除することができます(民法903条3項)。

4 遺産分割と特別受益の主張

 遺産分割について、まずは、相続人間で話合いを行います。話合いがつかない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停では、調停委員を介して話合いを行います。調停でも話合いがまとまらず、調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続が開始され、資料等に基づき裁判官が判断を下します。

 遺産分割において、「特別受益」があったと主張する相続人は、①遺贈又は②贈与の事実があったこと及び③その贈与が婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本としてなされたものであることを主張し、特別受益者である相続人は被相続人が持戻しの免除の意思表示をしたという場合はそれを主張することになります。さらに、主張の裏付け資料も提出することになります。

 なお、民法改正により、特別受益の主張に期限が定められたので注意が必要です(民法904条の3)。

5 最後に

 相続について疑問に思われることがあれば、お早目に弁護士にご相談されることをお勧めします。

執筆:弁護士 金丸有希
■ コラム ■

~新年の抱負~

 新年、明けましておめでとうございます! 皆様、新しい年、2025年をどのように迎えられたでしょうか?

 我が家では、毎年、新しく迎える一年の抱負や目標を、各々発表するのが恒例となっています。

 ちなみに、昨年、私が一番に掲げたのは、「毎日、家族から、笑顔はじめる」です。これは、夫や子どもら(高2女子、中2男子、小6男子、小3男子)から、いつも「鬼」「つのが生えてる」などと言われるので、心から反省し?、「素敵な妻、素敵な母」と言われるようになりたいと思ったからです!

 さあ、昨年一年間で、「笑顔で素敵な私」になったはずですが・・・?!

 ・・・最近、夫から、「忙しすぎるんじゃない?」「年も年なんだから、傲慢にならないよう気を付けないと」などとと言われるようになりました。今年一年、「謙虚にゆっくり生きる」を掲げ、頑張りたいと思います!

執筆:弁護士 田辺美紀

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