Q&A 残業代請求への対応-時効の主張
Q 従業員から,残業代請求の書類が来ましたが,入社した10年前から先月までの全ての期間について計算した合計額が記載されていました。残業代の時効は2年という知識はあるのですが,今から遡って,2年間のものだけについて支払義務がある,ということでしょうか。時効の考え方について,教えてください。
A 2年の時効という知識は,非常に誤解しやすく,その誤解が原因で,紛争の解決が長引いたり,権利行使の機会を失ってしまう事例すらあります。
まず,時効は,正式に時効を主張して初めて効果が生じます(法律用語で,「援用」といいます。)。裁判外でも主張できますが,言った言わないの話になりますので,内容証明郵便を利用するのが一般です。また,その書き方には注意が必要ですので,弁護士など専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
次に,これも多い誤解なのですが,時効を援用せずに,交渉を続けた場合,「債務の存在自体は認めた」と扱われ,時効援用権が喪失してしまうことがありえます。従業員側が,この時効援用権の喪失を主張してきた場合,解決まで非常に長引く例が多いと思われます。もちろん,裁判所が時効を認めないというリスクもあります。
今回のご質問の事案では,従業員さんは,過去10年分について,あえて請求してきていると分析できます。そうすると,御社側が,時効という争点について,どのような対応をしていくかを見定めようとしている可能性がありますので,慎重にご対応されることをお勧めいたします。
【弁護士の活用方法】相手方の請求の分析と,対応方針のアドバイス,さらに,代理交渉までを,弁護士に依頼することが可能です。
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