約款に基づく対応?(会社と相続ニュース No.8 2022年9月号)
- 2022年08月31日
- 会社と相続ニュースバックナンバー
約款に基づく対応?
1 通信障害が発生!
7月2日(土)より、KDDIの通信サービスに通信障害が生じました。
私は、その日、全国規模のイベントの運営手伝いをしていました。そこに、通信障害の情報が舞い込み、auユーザーの私も「なぜ、今日なのか…」と困惑したことを思い出します。
7月末、KDDIが顧客に対し返金をすると発表しました。返金内容の一つに「契約約款に基づくご返金」があり、通信障害期間中、24時間以上連続して全ての通信サービスを利用できなかった顧客(音声通信サービスのみ契約の顧客)が対象となるようです。
令和2年4月1日から施行された改正民法に、約款(定型約款)に関する規定が新設されました。KDDIの上記返金の根拠は約款とのことですが、そもそも約款とは、どういうものを言うのでしょうか。
以下、説明させていただきます。
2 民法上の約款(定型約款)
約款とは、大量の同種取引を迅速・効率的に行う等のために作成された定型的な内容の取引条項です。
民法548条の2第1項では、
- ある特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引で
- 内容の全部又は一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的なもの
を「定型取引」と定義した上で、この定型取引において、約款(定型約款)は、
- 契約の内容とすることを目的として、その特定の者により準備された条項の総体
と定義されています。
そして、
- 定型約款を契約の内容とする旨の合意があった場合
- (取引に際して)定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ相手方に表示していた場合
には、定型約款の条項の内容を相手方が認識していなくても合意したものとみなし、約款(定型約款)が契約内容となります。
民法の原則によれば、契約の当事者は契約の内容を認識しなければ契約に拘束されません。しかし、定型約款については、細部まで読んでいなくても、その内容を契約内容とする旨の合意があるのであれば、顧客を契約に拘束しても不都合は少ない(明示の合意がない場合であっても、定型約款を契約内容とする旨が顧客に表示された状態で取引行為が行われているのであれば、同様に不都合は少ない)と考えられているのです。
3 約款の例
約款(定型約款)は、鉄道やバスの運送約款、電気・ガスの供給約款、保険約款、インターネットサイトの利用規約など、多様な取引で広範に活用されています。他方で、一般的な事業者間取引で用いられる一方当事者の準備した契約書のひな型、労働契約のひな形等は、ここで言う約款(定型約款)には当たりません。
KDDIにも、個人向けモバイル通信サービス契約約款等が存在し、契約者に対する損害賠償に関する規定が置かれています。
4 約款のメリット、留意点
現代社会においては、大量の取引を迅速に行うため、詳細で画一的な取引条件等を定めた約款を用いることが必要となる場面は多いです。約款により、取引の安定化・円滑化を確保できます。
もっとも、便利な約款ではありますが、(定型取引の特質に照らして)相手方の利益を一方的に害する契約条項であって信義則(民法1条2項)に反する内容の条項については、合意したとはみなされず、契約内容とはなりません(民法548条の2第2項)。また、約款を変更し、その効力を生じるための要件が法律に定められているなど(民法548条の4)、約款の運用には、検討しなければならない点が多く含まれています。約款については、令和2年の民法改正で明文化されたこともあり、今後、議論が深まっていくことが期待されます。
5 おわりに
今回の通信障害を受けて、KDDIは上記返金とは別に、「通信障害のお詫び」として、通信障害期間中にスマートフォン、携帯電話及びホームプラス電話を契約していた全ての顧客に対し、「ご請求額から200円(税抜)の減算」等の返金対応も行うと発表しています。
この法的根拠は明らかではありませんが、さしあたり、私も、8月、9月には、SMSや請求書等を念入りにチェックしてみようと思います。
※以上の内容は、令和4年7月31日時点の情報に基づきます。
【ナラハQ&Aコーナー】子どもの出生届を出すことができません
Q 私は、前夫から暴力を振るわれ、別居しました。別居後、交際を始めた別の男性との間に子どもができました。子どもが生まれた後、前夫とようやく離婚できました。役場に出生届を出しに行ったところ、戸籍上、前夫が父になると言われて困っています。
A 日本は戸籍制度を採用しており、子どもが生まれると、役場に出生届を出すことにより、戸籍に記載されることになっています。ご質問のケースの場合は、次のような手続きが必要です。
- 前夫に嫡出否認の手続をとってもらう、
- 裁判手続で親子関係不存在確認の手続を行う、
- 血縁上の父を相手として強制認知の手続を行う。
これらの方法によって、父子関係を争う必要があるでしょう。
今回は、夏バテが心配な皆様に、頭の体操をしてもらおうと思います!
某中学受験の過去問を参考に、私がちょっとアレンジしてみました。
紙とペンをご用意ください。計算機や計算ソフトはできるだけ使わないようにしましょう。
第1問 3けたの整数□□7は、13でも23でも割り切れます。□□にあてはまる数字を入れてください。
第2問 あるクラスの男の子は2人が休み、女の子は6人休んだので、男の子が女の子より8人多くなりました。また、その人数比は、19対15になりました。お休みがいない場合の、もともとの男の子と女の子の人数は何人ですか?
答えはこちら
→第1問 □□7は13と23の公倍数です。13と23の最小公倍数は13×23=299です。
一の位が7になるのは、299×3のときで、897です。したがって、□□に入る数字は、8、9です。
→第2問 この日の出席者は19対15です。男の子の方が女の子より8人多く、19対15の比の19-15=4でみると、比の1あたりは8÷4=2人となります。そうすると、この日の出席者は、男の子2×19=38人、女の子2×15=30人となることが分かります。したがって、お休みがいない場合の男の子の人数は38人+2人=40人、女の子の人数は30人+6人=36人です。
いかがでしたか?皆様、正解できたでしょうか?
仕事で疲れたひと時、偶には算数の問題を解いてみるのも、案外、気分転換になるかもしれませんね!