Q&A アパート明渡に関する連帯保証人への委任

 

Q アパートの借主と連絡が取れなくなった場合に備えて,連帯保証人を「借主の代理人」とする条項を考えています。かつて当社が苦労したケースですが,賃料滞納によって解除した際に,借主が行方不明になったことがありました。保証人とは連絡が取れたのですが,明渡しや残置物の撤去については権限がないといって,対応してもらえなかったのです。近時,契約書に,連帯保証人に,明渡や残置物の撤去について委任する旨の規定を置く方法があるようです。この方法は,法的にも有効と考えてよいでしょうか。
A たしかに,そのような条項を利用する例は増えています。有効性については,ケース・バイ・ケースであり,裁判で争われた例もありますが,その保証人が借主と一定の信頼関係のある個人であり,借主がその意味を明確に認識していた場合は有効であると考えられます。これに対し,例えば,家賃保証会社を代理人とした場合は,消費者契約法によって無効となる可能性が高いと考えられます。事案によって異なりますので,詳しくは,弁護士にご相談ください。


Q&A 並行輸入と商標権侵害


 

Q 当社は,海外で販売されているブランド品を現地で購入し,日本国内で販売しています。最近,同業者から「商標権侵害で警告書を送付された」という話を聞きました。当社は,本物であることの確認はしていますが,それ以上は特に調べていません。注意すべきことは,どんなことでしょうか。
A ブランドの商標権を持っている会社の承諾を得ずに,そのブランド品を輸入することは,原則として,商標権を侵害することになります。もっとも,最高裁判例によって,次の3つの要件を満たす場合は,違法性がないとされています。この3つの要件を満たすことは,必ず確認する必要があります。商標権侵害は,損害賠償などの民事責任だけでなく,刑事罰もあり,責任は非常に重いものです。
 違法性がなくなるための3つの要件は,次のとおりです。
1 当該商品に付された商標が外国の商標権者等により適法に付されたものであること(適法性の要件)
2 外国の商標権者と日本の商標権者が同一人,又は法律的,経済的に同一視できる関係にあること(同一人性の要件)
3 当該商品と,日本の商標権者が扱う商品とが,品質において実質的に差異がないこと(品質管理の要件)
 なお,立証責任は,並行輸入をしている業者側にあります。
 また,万一,「警告書」を受け取った場合は,即答せず,専門家の意見を聴いたうえで,対応方針を決めてください。


Q&A 同族会社の後継指名


 

Q 当社の創業者で代表取締役社長が急に亡くなりました。その後,取締役会で,新しい代表取締役を選定し,新体制で動き出していました。
ところが,先日,先代社長の長男(取締役ではありません)から連絡があり,先代社長の自筆の遺言書を提示され,その中に,次期社長として長男を指名するという記載がありました。
社長の指名については,遺言書の記載に法的拘束力がないことは分かっています。
懸念しているのは,その長男は,今回相続するものを含め,当社株式の3分の1を所有していることです。今後,どのような動きが予想されますか。

A まず,おっしゃるとおり,後継指名の遺言には法的効力がありません。代表取締役の選定は,会社法の規定にしたがって行われます。
もし,その長男さんが経営に関心があり,社長就任を希望するのであれば,まず,「取締役」に就任することを目指すことになります。他の株主の持株と合わせて,株式の「過半数以上」の賛成を得られるように,動くことが予測されます。次の定時株主総会を待つか,または,臨時株主総会の招集を要望する(懇意の取締役に働きかける,株主権の行使としての株主総会招集請求をする等)ことがありえます。
そして,取締役に就任した後,取締役会において,自分が代表取締役の選定を受けるように動くという流れが予測されます。
法的な分析も大切ですが,大株主である長男さんの意向を把握することも大切です。先代社長のその遺言には法的拘束力はありませんが,その背景を踏まえて,より深い分析をし,根本的な対応策を検討されることをお勧めします。


Q&A 年俸制の医師の残業代


 

Q 当院には,いわゆる年俸制で契約している勤務医がおりますが「新しい最高裁判決で,割増の残業代が別途もらえるようになったらしい」という趣旨の話をしてきました。それは本当でしょうか。
A 年俸に加えて割増残業代を支払う義務があるか否かは,貴院の年俸制の内容等を,詳しく検討しないと結論が出せません。必ずしも「年俸制であっても割増残業代が別途もらえるという判決が出た」という訳ではありません。
おそらく,最高裁平成29年7月7日判決のことを言っているのだと思います。この判例の趣旨を分かり易くいうと,「割増賃金を年俸制に組み込む場合は,割増賃金の部分と基本給の部分とを区別することができる体系になっている必要があり,そうでないと,法律上の割増賃金が支払われたことが確認できない」ということです。
そうすると,貴院の契約が割増賃金の部分と基本給の部分を区別できる規定であって,実際に法律上の割増賃金が支払われたと確認できる場合は,別途,年俸の他に,残業代を支払う必要はない,ということになります。
詳しくはご相談ください。年俸制の内容や労働時間を精査して判断する必要があると考えます。


Q&A テナント料の滞納と賃貸借契約の解除,明渡請求

 

Q 当社はビルをテナントに貸していますが,ある飲食店の賃料滞納に悩んでいます。滞納が始まったのは昨年からです。飛び飛びでしか入金がなくなり,ここ3か月は全く入金がありません。店の営業ですが,先月,和食に加えて洋食を始めたようで,店の名前を洋食店風に変えていました。
A 既に3か月滞納があったのであれば,内容証明郵便で督促のうえ,入金がなければ解除する旨の通知を出すことを検討されたほうが良いと考えます。
なお,営業形態が変わったり,店の名前が変わるのは,危険信号です。他人に又貸しをしたのかもしれず,今後,物件に第三者が居座るリスクが出てきます。
明渡しの訴訟に先行して,事実関係を調査したうえ,「占有移転禁止の仮処分」を申立てる必要があると考えます。


Q&A 建物賃貸借の合意解約についての注意点

 

Q 当社は,貸し店舗をテナントに出していましたが,このたび,賃借人さんとの賃貸借契約を,合意解約することになりました。賃借人さんに対しては,次の年度末である2019年3月末日まで,その貸し店舗の使用を認める予定です。
この合意解約について,合意書を作成する予定ですが,「賃貸借契約の終了日は2019年3月末とする」という表現でよいでしょうか。注意点があれば教えてください。

A ご記載の表現であれば,賃貸借契約は継続することとなります。そのため,2019年3月末日における解約の有効性が争われるリスクがあります。
御社の立場からすれば,「合意解約は本日付けで行い,賃貸借契約は本日終了すること」「2019年3月末日までは,明渡を猶予するにすぎないこと」が明確に分かる条項にすることをお勧めします。


Q&A 医院の待合室でのフルネームでの呼び出し


 

Q 当クリニックでは,患者さんの順番が来ると,フルネームでお呼びし,診察室へ誘導しています。
しかし,先日,ある患者さんからクレームがありました。自分の名前を他の患者さんに聞かれてしまうのは,個人情報の漏洩で,プライバシーの侵害だと抗議を受けたのです。患者さんをフルネームでお呼びすることは,やめたほうが良いのでしょうか。
A 必ずしも,やめる必要はありません。お名前自体は,秘密事項ではありませんので,プライバシー侵害の問題にはならないと考えます。
フルネームで呼ぶ方法は,取り違えを防止するという大切な意味があります。
たしかに,近時,患者さんの中には,通院していること自体もできるだけ知られたくない,と考える方もおられ,医院の中には,受付番号を発行し,番号で呼び出す方法を採用するところもあります。しかし,これは各医院の接遇方針の問題であり,法的な義務であるとまではいえません。むしろ,番号で呼ばれることに違和感を感じる,との声もあるようで,一概に,どの方法が最適であるとまではいえないのが実情だと思われます。そのため,貴院の方針にそって,適切に対応されれば良い事項だと考えます。


Q&A 取締役を辞任したが,登記が残ったままである場合

 

Q 私は,昨年,社内の経営方針の違いから,取締役を辞任することになりました。辞任届を提出し,取締役会からも承認されました。
しかし,先日,その会社の商業登記を見たところ,私の取締役登記はそのままになっていました。このままでは責任が生じるのではないかと心配です。
自分で登記申請することはできるでしょうか。
A 登記の申請は,原則として,会社が行うことになっています。そのため,まずは,会社に対し,内容証明郵便などで,辞任の登記をすることを求めてください。
会社側が辞任の登記に応じない場合は,訴訟を提起することが必要です。勝訴判決が確定すれば,判決に基づいて,原告であるあなたが登記を申請できます。
もし,登記を放置することをあなたが黙認していた,とみられると,会社の行為について,あなたが責任を負うことがありえます。そのため,状況によっては,関係先に対して,辞任した旨を通知することや,会社に対してあなたの名前を使わないよう求める仮処分を申し立てることが必要な場合もあります。
なお,あなたが取締役を退任することにより,取締役の員数が法令や定款で規定された員数を欠くことになる場合は,後任者の選任登記と同時でないと,退任の登記ができません。詳しくは弁護士にご相談ください。


Q&A 社外取締役の責任

 

Q 当社では,地域の業界で有名な方を,社外取締役として役員に迎えることを検討しています。この方は,他社でも社外取締役をされているということです。
実は,社内では反対意見があり,取締役会では経営戦略など機密事項を議論するのですが,外部の方がいると,漏洩のリスクがあって忌憚のない意見が言えなくなる,というのです。そこで,万一のことですが,情報が漏洩した場合などは,法的な責任を問えるのでしょうか。それとも,社外取締役である以上は,責任を問えないのでしょうか。
A 社外取締役であっても,取締役ですから,会社との間で委任関係があり,善管注意義務・忠実義務を負担することには変わりありません。守秘義務もありますので,違反した場合は,会社に対し,法的責任を負います。
ご承知と思いますが,社外取締役の導入については,メリットとデメリットがあり,様々な議論があります。外部の知見を導入するとしても,社外取締役というポストが相応しいのかどうかは,その会社の個性にもよります。社内で十分に議論を尽くされることをお勧めします。


Q&A 社員が会社のパソコンを使用してサイドビジネスをしている

 

Q 当社の社員が,業務時間中,自席のパソコンを使用して,サイドビジネスをしているという報告がありました。
近々,呼び出して役員から注意する予定です。サイドビジネスには,どのような法的問題点があるでしょうか。

A 業務時間中に,サイドビジネスをするということは,その時間は業務をしていないことになり,いわば職場離脱です。周りの社員への悪影響は大きいものです。
また,会社の備品を,業務以外に濫用していることになります。
さらに,このようなサイドビジネスは,会社の名前,社用のメールアドレス,業務上知り合った人脈を利用して行うことが多く,競業避止義務違反,ひいては会社の信用の低下につながります。
当該社員に対しては,就業規則の「服務規程」を示して厳重に注意し,状況に応じて,正式な懲戒処分を検討されたほうが良いと思います。


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