Q&A 判断能力が疑わしい利用者さんとの契約

 

Q 高齢者向けの福祉サービス契約の締結にあたって、利用者となる方の判断能力がはっきりとしない場合、ご家族に代筆してもらう方法を従来していました。しかし、先般、福祉サービスに関し、ご親族からクレームを受けることがあり、その中で、そもそも契約したこと自体がおかしいと指摘を受けました。当初代筆していただいたご家族は、現在は別居しておられ、今回クレームをおっしゃったのは、代筆した方とは別の方です。この出来事から、代筆はリスクが高いことを痛感しました。
今後は、どのようにしていけばよいでしょうか。

A ご本人の判断能力が疑わしい場合は、成年後見人が付いた後に、契約するのが原則となります。ご家族が、判断能力はあると主張され、成年後見制度は必要ないとおっしゃる場合には、主治医の診断書で、判断能力があることを確認し、記録に残すことが大切です。
なお、代筆が有効となりうるのは、ご本人の判断能力がはっきりしているものの、字を書くことができない場合です。このように場合であっても、適正な契約方法であることを説明できるように、その状況を詳しく記録に残すことをお勧めします。


Q&A セット販売と「景品」


 

Q 当社はビジネスパーソン用の衣料品を販売しています。ウォーム・ビズの時期に向けて,キャンペーンのため,下記の3つの方法を検討しています。これらは,景品表示法の規制を受けるのでしょうか。
 ①カーディガンとマフラーをセットにして販売し,全体の代金として値引きする。
 ②カーディガンを買うと,マフラーをプレゼントする。
 ③カーディガンを1つ買うと,色違いのカーディガンを1つプレゼントする。
A 「景品」とは,顧客を誘引する手段として,事業者が自己の提供する商品又は役務に付随して相手方に提供する経済上の利益のことをいいます。
 ①のように,セットで販売する場合は,セットで1つの商品と考えることができ,「取引に付随」する取引とはなりませんので,「景品」にはあたらず,規制対象とはなりません。
 ②のように,マフラーが無償でプレゼントされるのであれば,マフラーは,カーディガンの「取引に付随」して提供されるものと評価され,「景品」に該当すると考えます。総付景品として,景品の最高額の規制もあります。
 ③の場合は,具体的な商品の性質や広告文言により,結論が異なると考えられます。消費者から見て,「カーディガンを2つ買うと,それぞれ半額になる」という意味に認識する場合は,それは,いわゆる「増量値引き」であり,景品規制の対象にはなりません。これに対し,そのように一般消費者が認識せず,②のようなプレゼントと同じような景品だと認識される場合は,景品として規制の対象となると考えます。


Q&A 原産国の表示


 

Q 当社は紳士用の衣料品を輸入し,日本国内で一般消費者に販売しています。ある商品につき,商社からは,A国製であることが記載された書類を受け取っており,当社でも「made in A」というタグを付けて販売していました。
 しかし,その後,その商社の書類は間違っており,真実は,B国製であることが分かりました。
 原産国の表示は,不当表示の問題になりますか。また,今回は当社が故意にしたわけではないのですが,不当表示の責任があるのでしょうか。
A 原産国の表示は,消費者が品質を判断するうえで,一つの指標となりますので,「優良誤認表示」の問題となります。たしかに,今回は,貴社が故意に,真実ではない表示をしたわけではない,とのことです。
 しかしながら,景品表示法は一般消費者を保護する法律であり,結果として,消費者が誤認することになる表示は,規制対象となります。そのため,御社は,故意がなくとも,不当表示について責任を負うことになります。具体的な対応等については,弁護士にご相談ください。


Q&A 比較広告の留意点


 

Q 当社製品について,新しい広告を検討しています。具体的には,競合他社の製品よりも,機能性が高いという長所を強調する,いわゆる「比較広告」を考えています。もっとも,この当社製品は,使用上の容易性や耐久性の点では,競合他社の製品よりも,やや劣っており,この点は,短所ではあります。
 このような製品について,「比較広告」をする場合,長所である機能性のみを比較しても,問題はないでしょうか。基準などがあれば教えてください。
A 比較広告については,公正取引委員会のガイドラインがあります。
適正な広告というためには,次の3つの要件を満たす必要があります。それは,①主張する内容が客観的に実証されていること,②実証されている数値や事実を正確かつ適切に引用すること,③比較の方法が公正であること,という要件です。
 上記の①と②の要件は厳守するとして,短所に言及せず長所のみを比較する広告であっても,直ちに上記③の要件の「公正」でない,とはいえないと思われます。
 もっとも,言及しない短所の内容や性格によっては,「商品全体の機能・効用」について,消費者に誤認を与える可能性が出てきます。例えば,長所と一体の関係にある短所について,短所に全く言及しない場合は,その長所自体について誤解が生じることになりえます。
 不当表示となった場合には,行政庁からの法的措置を受ける可能性があるだけでなく,消費者からの信頼を失うなどリスクが非常に大きいですので,慎重に検討されることをお勧めします。詳しくは,ご相談ください。


Q&A 労働局の「あっせん」手続き


 

Q 退職した従業員から,パワハラや不当解雇だと主張する内容証明郵便が届いていましたが,先日,労働局の「あっせん」手続きを申し立てられました。その従業員はミスも多く,職場の人間関係も難しく,退職時もケンカ別れのような様相で,退職届もないまま出社しなくなったという経緯があります。
 あっせんの手続きには,出席したほうが良いでしょうか。
A 制度としては,あっせんの手続きに参加する義務はありません。実際,全くの言いがかりであることが明らかなケースでは参加しない選択をするほうが一般的だと思われます。もっとも,本件については,参加して相手方の話を聞いてみるのも選択肢だと思います。早期解決の可能性もありますし,決裂した場合であっても相手方の主張内容を現時点で把握できることは有益だと思われます。
参加するかどうかの判断は大切ですので,詳しくは弁護士等にご相談ください。


Q&A アパート明渡に関する連帯保証人への委任

 

Q アパートの借主と連絡が取れなくなった場合に備えて,連帯保証人を「借主の代理人」とする条項を考えています。かつて当社が苦労したケースですが,賃料滞納によって解除した際に,借主が行方不明になったことがありました。保証人とは連絡が取れたのですが,明渡しや残置物の撤去については権限がないといって,対応してもらえなかったのです。近時,契約書に,連帯保証人に,明渡や残置物の撤去について委任する旨の規定を置く方法があるようです。この方法は,法的にも有効と考えてよいでしょうか。
A たしかに,そのような条項を利用する例は増えています。有効性については,ケース・バイ・ケースであり,裁判で争われた例もありますが,その保証人が借主と一定の信頼関係のある個人であり,借主がその意味を明確に認識していた場合は有効であると考えられます。これに対し,例えば,家賃保証会社を代理人とした場合は,消費者契約法によって無効となる可能性が高いと考えられます。事案によって異なりますので,詳しくは,弁護士にご相談ください。


Q&A 並行輸入と商標権侵害


 

Q 当社は,海外で販売されているブランド品を現地で購入し,日本国内で販売しています。最近,同業者から「商標権侵害で警告書を送付された」という話を聞きました。当社は,本物であることの確認はしていますが,それ以上は特に調べていません。注意すべきことは,どんなことでしょうか。
A ブランドの商標権を持っている会社の承諾を得ずに,そのブランド品を輸入することは,原則として,商標権を侵害することになります。もっとも,最高裁判例によって,次の3つの要件を満たす場合は,違法性がないとされています。この3つの要件を満たすことは,必ず確認する必要があります。商標権侵害は,損害賠償などの民事責任だけでなく,刑事罰もあり,責任は非常に重いものです。
 違法性がなくなるための3つの要件は,次のとおりです。
1 当該商品に付された商標が外国の商標権者等により適法に付されたものであること(適法性の要件)
2 外国の商標権者と日本の商標権者が同一人,又は法律的,経済的に同一視できる関係にあること(同一人性の要件)
3 当該商品と,日本の商標権者が扱う商品とが,品質において実質的に差異がないこと(品質管理の要件)
 なお,立証責任は,並行輸入をしている業者側にあります。
 また,万一,「警告書」を受け取った場合は,即答せず,専門家の意見を聴いたうえで,対応方針を決めてください。


Q&A 同族会社の後継指名


 

Q 当社の創業者で代表取締役社長が急に亡くなりました。その後,取締役会で,新しい代表取締役を選定し,新体制で動き出していました。
ところが,先日,先代社長の長男(取締役ではありません)から連絡があり,先代社長の自筆の遺言書を提示され,その中に,次期社長として長男を指名するという記載がありました。
社長の指名については,遺言書の記載に法的拘束力がないことは分かっています。
懸念しているのは,その長男は,今回相続するものを含め,当社株式の3分の1を所有していることです。今後,どのような動きが予想されますか。

A まず,おっしゃるとおり,後継指名の遺言には法的効力がありません。代表取締役の選定は,会社法の規定にしたがって行われます。
もし,その長男さんが経営に関心があり,社長就任を希望するのであれば,まず,「取締役」に就任することを目指すことになります。他の株主の持株と合わせて,株式の「過半数以上」の賛成を得られるように,動くことが予測されます。次の定時株主総会を待つか,または,臨時株主総会の招集を要望する(懇意の取締役に働きかける,株主権の行使としての株主総会招集請求をする等)ことがありえます。
そして,取締役に就任した後,取締役会において,自分が代表取締役の選定を受けるように動くという流れが予測されます。
法的な分析も大切ですが,大株主である長男さんの意向を把握することも大切です。先代社長のその遺言には法的拘束力はありませんが,その背景を踏まえて,より深い分析をし,根本的な対応策を検討されることをお勧めします。


Q&A 年俸制の医師の残業代


 

Q 当院には,いわゆる年俸制で契約している勤務医がおりますが「新しい最高裁判決で,割増の残業代が別途もらえるようになったらしい」という趣旨の話をしてきました。それは本当でしょうか。
A 年俸に加えて割増残業代を支払う義務があるか否かは,貴院の年俸制の内容等を,詳しく検討しないと結論が出せません。必ずしも「年俸制であっても割増残業代が別途もらえるという判決が出た」という訳ではありません。
おそらく,最高裁平成29年7月7日判決のことを言っているのだと思います。この判例の趣旨を分かり易くいうと,「割増賃金を年俸制に組み込む場合は,割増賃金の部分と基本給の部分とを区別することができる体系になっている必要があり,そうでないと,法律上の割増賃金が支払われたことが確認できない」ということです。
そうすると,貴院の契約が割増賃金の部分と基本給の部分を区別できる規定であって,実際に法律上の割増賃金が支払われたと確認できる場合は,別途,年俸の他に,残業代を支払う必要はない,ということになります。
詳しくはご相談ください。年俸制の内容や労働時間を精査して判断する必要があると考えます。


Q&A テナント料の滞納と賃貸借契約の解除,明渡請求

 

Q 当社はビルをテナントに貸していますが,ある飲食店の賃料滞納に悩んでいます。滞納が始まったのは昨年からです。飛び飛びでしか入金がなくなり,ここ3か月は全く入金がありません。店の営業ですが,先月,和食に加えて洋食を始めたようで,店の名前を洋食店風に変えていました。
A 既に3か月滞納があったのであれば,内容証明郵便で督促のうえ,入金がなければ解除する旨の通知を出すことを検討されたほうが良いと考えます。
なお,営業形態が変わったり,店の名前が変わるのは,危険信号です。他人に又貸しをしたのかもしれず,今後,物件に第三者が居座るリスクが出てきます。
明渡しの訴訟に先行して,事実関係を調査したうえ,「占有移転禁止の仮処分」を申立てる必要があると考えます。


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