欠勤や休職を繰り返す社員への対応

1 最初の休職が大切

 休職と復職を繰り返す社員についての相談は増えています。「休職」とは、雇用関係を残しつつ、勤務を免除(または禁止)する制度です。
 ポイントは、休職と復職を、合理的理由なく繰り返すことがないことを防止する点にあります。その視点からは、最初に休職させるときが非常に重要です。
 ポイントは、「休職制度と復職の判断手続」について、しっかりと説明することです。特に、①休職期間、②復職希望の際には、診断書を添付して期限までに提出すること、③会社担当者との事前面接があること、④主治医との面談、産業医の診断があること等について、予め説明しておくことが肝要です。

 よくあるのは、「軽作業なら可」という主治医の診断書が提出される場合です。このような記載の診断書は、主治医が会社での業務内容を詳しく理解しないまま作成することが多く、本当に復職させても大丈夫なのか判断はつきかねます。
 その意味で、上記④の主治医との面談、産業医の診断は、必須であると思います。

 書式については、厚生労働省のガイドライン(「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」)が参考になります。
 なお、休職の初動対応については、『メンタルヘルス』の項目で詳しくご説明しておりますので、ご参照ください。

2 既に繰り返されている場合

 では、既に欠勤や休職が繰り返されている場合は、どのように対応すればよいでしょうか。
 お勧めする方法は、改めて、就業規則に基づいて、休職命令を正式に出し、「休職と復職の制度」について説明し直す方法です。次の休職期間から、本格的な対応にする、という発想です。

 もし、就業規則が古いのであれば、この機会に整備することを強くお勧めします。この場合、就業規則の改正の手続きは慎重に進める必要がありますので、詳しい専門職にご相談されることをお勧めします(就業規則の不利益変更にあたる場合があるからです)。

 さらに、休職者が出るという現象の「根を切る」という発想から、長時間労働がないのか、また社内のパワハラ・セクハラがないのか、といった視点で、社内のコンプライアンスの徹底を図ることが有益だと考えます。

3 弁護士の活用例

 休職手続の進め方、復職の判断というセンシティブな部分につき、就業規則等を踏まえ、会社側の対応をバックバックいたします。
 また、事案に応じて、代理人として、休職中の従業員と直接交渉をご依頼いただくこともできます。
 さらに、就業規則の改定のアドバイスや、会社全体のコンプライアンス向上のためのご提案をすることができます。

4 当事務所の解決事例の一例

 業務中に交通事故を2度起こし、工場で作業中、3度、気を失って倒れた社員がいました。医師の診断は、原因は分からないという判断でした。会社としては、このままでは危険と判断し、「休職命令」を出しました。

 休職命令を出す前のタイミングで、弁護士に依頼がありました。弁護士から、その社員さんに、休職の制度や復職の手続きについて詳しく説明しました。その社員さんは、「できれば会社に戻りたいが、体が心配です」というご意向でした。会社側としては、復職申請があった場合に備えて弁護士と対応を協議しつつ、見守っていましたが、休職期間の満了を前にして、「復職は希望しません」との連絡があり、トラブルにならずに退職手続きを行うことができました。

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