従業員の休職時の対応について弁護士が解説

1 メンタルヘルス不調の従業員への対応方法

 職場でメンタルヘルス不調の様子が見られる従業員が増えています。

 メンタルヘルス不調の従業員は、突然、仕事に来ないことがあります。仕事に来ることができたとしても、(頻繁に)早退する、仕事の能率が上がらない、周囲の人とトラブルを引き起こす、といったことが考えられます。企業としても、メンタルヘルス不調の従業員への対応に時間を割かなければならなくなるなど、不要なコストがかかる可能性もあります。

 このように、メンタルヘルス不調の労働者の存在は、企業活動にプラスに働くとは言えません。企業の経済活動へ良くない影響を与えるだけでなく、企業内の人間関係にも影響を及ぼす可能性があります。何よりも、不調を訴える本人がそのままの状態で仕事を続けることは、本人にとっても危険かつしんどいものであり、避けなければならない事態です。

 こういった場合に、休職させずに即座に解雇するということは、解雇権濫用等と判断される可能性が高いです。休職を経ないで解雇することには、基本的には慎重であるべきでしょう。そこで、メンタルヘルス不調の従業員への対応方法として、休職制度(休職期間満了で自然退職)が重要になってきます。

2 休職制度の活用

 病気休職においては、比較的長期間、就労を免除、禁止することが想定されるため、休職命令を出す際には、契約上の根拠(就業規則の定め。厚生労働省「モデル就業規則(令和5年7月)」第9条を参照)が必要です。

 休職期間中に休職事由がなくなった場合は、当然に休職が解除され復職となります。休職期間満了で自然退職として差し支えないかは、具体的な事情を踏まえて判断されることになります。休職期間満了時に、雇用終了又は復職とは異なるもう1つの選択肢として、休職の延長を可能とする制度を設けておくことも考えられます。

 休職原因たる疾病の回復可能性ついては、医学的な見地(労働者の主治医や企業の産業医の意見)から検討する必要があります。情報を取得するために、労働者の同意を得ておくべきです。

 復職可能性(休職事由の消滅)については、休職期間満了時までに従前の職務を通常程度行うことができる状態にまで至っているかという観点が重要ですが、これは、具体的事案に即して判断されます。

3 休職制度に利用できる書式

 以下では、メンタルヘルス不調などの従業員に対し休職制度(休職期間満了で自然退職)を適用するのに役立つと考えられる書式をお示しします。同じような書類であっても、事案によって使い分けることが必要です。

(1)まずは「休職願」を提出してもらいます。

 診断書の添付も必須です。休職期間も定めますが、期間はケースバイケースです(前述のとおり、延長もありえます。)。

 なお、休職中に本人と連絡が取れなくなることを避けるために、緊急連絡先も記入してもらうと良いでしょう。

(2)休職の「通知書」を発することもあります。

 就業規則の定めに基づき、休職命令を出します。休職制度、復職の流れについて概括的に説明を行います。より具体的な内容は、下記⑶の覚書や確認書にて定めます。

(3)「休職に関する覚書」「休職に際しての確認書」を作成します。

 上記⑴、⑵に基づき、休職期間、復職の流れ、復職しない場合の取扱い(休職期間満了で当然退職となる)、休職期間中の定期報告の方法、給与、社会保険料や住民税の扱いなどを確認しておきます。

(4)上記⑶に基づき、「休職期間中の定期報告書」を提出してもらいます。

 後に、主治医等と面談して知り得た内容と照らし合わせることができるように、しっかりとした記述を求めるべきです。

(5)これまでの流れを本人に再認識してもらうためにも、「休職期間満了予告書」を発しておくと良いでしょう。

 休職期間満了日が近づいてきたタイミングで、復職、休職期間満了で自然退職という流れについて、改めて通知します。

(6)「復職願」も用意しておきます。復職にあたっては、診断書の添付を求めます。

 なお、復職のための様々な手続きについて詳細に記載しておくこともあります。

(7)「医師との面談の同意について」と題する書面を取得することも有用です。

 企業が復職の可否を判断するために、主治医等から話を聞くことは重要です。このときに、上記⑷の書類との照合も行うことになります。

(8)「職場復帰支援に関する情報提供依頼書」も、復職許可にあたっての判断資料を集めるという観点から有用です。

4 休職制度に詳しい専門家は、弁護士です

 以上の休職・復職対応については、企業内で明確なルールを設定・周知し、医療関係者の関与も得た上で、労働者ときちんとコミュニケーションをとって進めることが必要ですが、それには、休職制度、企業法務・労働問題に精通した専門家の関わりが欠かせません。

 弊事務所では、企業様ごとの個別の事情をお聴きした上で、お示しした書式の中から事案に応じたものを選んで利用しながら、また事案によっては内容を加除・修正しながら、メンタルヘルス不調に陥っている従業員への休職対応等について助言を行わせていただいております。

 労基法に明確な定めがない休職・復職対応について、ぜひ、専門家であるナラハの弁護士までご相談ください。

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