問題社員対策

1 放置する弊害

 いわゆる問題社員の相談には、トラブルを起こす社員の言動が職場全体、会社全体に悪影響を及ぼしかねない事案が多く含まれているように感じます。そのようなトラブルを放置していると、まるで会社が黙認しているかのような印象を与え、優秀な社員から反発を受け、離職率が悪化することがありえます。
 会社の姿勢として、積極的にトラブル防止・解消に向け努力していることを全従業員に示すことが、業績向上にも好影響を与えるものと考えられます。

2 最近増えている問題社員のパターン

 最近増えているパターンとしては、①私生活でトラブルを抱えているパターン、②職場内でトラブルを起こすパターン、③ネットに仕事内容を書き込むパターン、④メンタルヘルスが背景にあるパターンが挙げられます。いずれも、放置することの弊害が大きく、早期の対策が有効です。④については、「メンタルヘルスと休職」の項目をご覧ください。このコーナーでは、①から③について説明します。

3 類型別の弁護士の対応

 どの類型にもいえることですが、問題が起こるたびに、「始末書」や「改善報告書」を提出させ、出来事を記録することが大切です。会社側でも、一冊のノートを作るなどして、逐次記入していくなどの備えが大切だと思います。そのような中で、見過ごせない事件を起こした場合は、たとえ手間がかかると感じられたとしても、正式に「訓戒」などの比較的軽い懲戒処分を正式に行っていくという方法も選択肢であると考えます。
 以下、類型別に特徴をみていきます。

(1)私生活でトラブルを抱えているパターン

 このパターンで多いのは、男女問題や、サイドビジネスによる金銭トラブルです。交通事故や犯罪(特に、盗撮や痴漢)も古くからあるケースです。
 まず、本人を呼び出して、上司や総務担当者から事情を聴くところから始めます。
次に、「懲戒処分」を検討することになるのですが、私生活上の行為は、原則として懲戒処分の対象とならない、というのが判例です。もっとも、総合的に考慮して、「企業秩序に直接の関連を有するもの」「会社の評価の低下毀損につながるおそれが客観的に認められる場合」は、対象となります。
 私の個人的な意見ですが、一番大きなポイントは、「事件内容と職務内容との関連性」です。典型的には、運転手さんが交通事故を起こした場合、教育関係者が子供に関する事件を起こしたような場合には、懲戒の対象になりうる傾向があると思います。

(2)職場内でトラブルを起こすパターン

 このパターンの原因で多いのは、同僚からの借財です。背景に、多重債務やネットワークビジネスでの経済的困窮がある例があります。また、男女関係のもつれから、会社内でストーカーのトラブルが生じることがあります。
 この類型では、就業規則の「服務規律」の規定を有効に使うという対処法があります。就業規則には、「従業員同士は、互いに人格に尊重し、私的なトラブルを起こしてはならない」などの条文が入っています。その条文を根拠に、指導や改善命令を出し、状況次第では、「戒告」などの懲戒処分を検討することもありえます。
 もし御社の「就業規則」に、従業員同士のトラブルについて有効活用できる「服務規律」がないのであれば、この際、改正することをお勧めします。パワハラ、セクハラ対策などの条項を入れ、「まじめに仕事に励む従業員さんたちを守る」ルールを整備することをお勧めします。

(3)ネットに仕事内容を書き込むパターン

 これは、最近増えている相談です。①SNSに業務内容が分かる内容をアップする例と、②企業秘密や会社の悪口を、ブログやネット上の掲示板に書き込む例があります。
①の場合、従業員自身が悪いことをしているという意識が薄いのが実情です。しかし、例えば、ランチの写真、イルミネーションの写真であっても、ライバル企業から見れば、営業戦略を推知する情報になりえます。
まずは、「情報管理研修」を実施され、SNSへのアップはリスクが高いこと、利用のルールを周知することから始めてはいかがでしょうか。
 ②の場合は、毅然とした対応が必要です。「就業規則」の中の「服務規律」の規定に、「業務上知り得た会社や取引先等の秘密を外部に公表しない」との条項があるはずです。その「服務規律」違反を理由に、まずは「文書による指導」をし、「懲戒処分」を検討することになります。悪質な場合は、名誉棄損などを理由とした損害賠償請求や刑事告発を検討することすらありえます。
 いずれにしても、そのようなネット上の書き込みを把握した段階で、ページをプリントアウトする(スクリーンショットを撮る)などして、証拠を保全することが大切です。

【解決事例】

 職場で同僚からお金を借り、小口現金から無断で前借をした従業員がいました。同僚への返済の滞納がきっかけに、職場での人間関係も悪くなっていました。業務上のミスも増え、上司に対する反抗的な言動が目立つようになっていました。
 弁護士への依頼があった後、弁護士がその従業員に対し、聴き取り調査を行い、始末書の提出を求めました。これを踏まえ、「文書による指導」を行いました。その後、兼職禁止に違反して副業をしていたことが判明し、これについて、「戒告」の処分を出しました。その後さらに、金銭問題を起こしたため、「諭旨解雇」とし、その従業員は退職しました。

4 弁護士を利用するメリット

(1)問題社員に対する説明・指導

社内の調査や、社長による指導の補助ができます。

  1. 問題社員に対する聴き取り調査
  2. 「指導書」の作成
  3. 指導の同席、補足説明、問題社員からの質問への回答

 方針の立案、文書の作成を専門家に任せるというメリットに加え、外部の専門家が関わることで、感情的な対立を生むリスクが減るという効果もあります。

(2)将来の見通しを踏まえて、冷静な判断ができる

 将来的に、懲戒処分がありえる、という前提で、準備をすることができます。法律的に、どの程度の事件で、どの程度の証拠が必要なのか、という専門的な見地からの見通しを踏まえて、冷静に将来のシナリオを検討することができます。そのため、弁護士にお任せになれば、会社担当者様が迷いながら将来のことを心配される、というご負担を減らすことが出来ます。

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