辞職を促したい従業員への対応方法について

1 まずは選択肢を広げて話し合う

 従業員さん個人の適性や能力、意欲について、経営者が疑問を持つことは珍しくありません。特に、中途採用の場合、経営者からすると、面接時にイメージした人物像や働きぶりと、現実との違いに驚かれることもあるでしょう。
 まずは、その従業員さんと率直に話合うことが必要不可欠です。担当の上司や同僚からのヒアリングも有効です。具体的にどの部分に改善が必要なのか、どのようなシチュエーションでトラブルが生じやすいのかを把握しておくことで、対応の選択肢が広がります。
 理想的なのは、適性や意欲に沿った「配置転換」だと思われます。同僚との間の「担当換え」のみで、人柄が変わったように働き始める例もあります。試行錯誤してみることで、人材の活用が図れたという事例は珍しくありません。
 なお、このような時に、その従業員さんから、プライベートで課題を抱えていることや、家庭の事情で勤務時間帯の調整を希望していることを打ち明けられることもあります。原因が分かれば対策は可能になりますので、その意味でも率直な話し合いが大切だと思われます。

2 合意退職を視野に入れる

 話し合いや試行錯誤をした後に、それでもなお、一致点が見えないというのであれば、合意退職を視野に入れることも選択肢です。
 従業員にとって退職とは、生活の糧を失い、日々の生活を全て変えてしまうほどの重要な決断です。
 決断を急がせるのではなく、従業員さんが将来を見据えて、前向きな選択肢として退職を選んだというプロセスを進むことが、結果的には最もスムーズであると考えます。

3 合意退職の交渉(退職勧奨)

 非常に大切なのは、条件交渉を開始する最初のタイミングです。
 まずは、従業員さんの側で、(決断はまだだけれども)退職を視野に入れる、という点について心理的抵抗が小さくなっていることを確認してください。抵抗があるうちに退職の話を始めると、最初は黙っていても、後々感情面の対立が原因で、交渉が頓挫する可能性が高いと思われます。
 面談日を設定し、会社側の条件や、本人の希望をすりあわせていくことになります。退職金の上乗せや、失業保険の受給見込みなど、従業員の関心が高い点については、事前に社会保険労務士の先生と連絡をとって、確認されることをお勧めします。
 面談を重ね、条件について、合意が成立した場合は、「合意書」を作成し、各種の手続きを行います。

<話し合いの進め方のイメージ例>

初回面談(希望や心配事などを聞き取る。次回面談の予定を入れる)
 
面談を2回から3回続け、配置換えなどについて話し合う
 
調整のうえ、配置換えを試す。

<退職合意に向けた話し合いの進め方のイメージ>

面談(現状に対する本人の意思や希望を聞き取る)
 
本人の意思を尊重しながら、面談を重ねる(本人の意思を踏まえて、在職し続けた場合の見込みや、退職・契約類型の変更の可能性について言及する)
 
従業員の意思が退職を選択肢とするようになったことを確認したうえ、具体的な大枠の条件提示を行う(典型的には、退職金の上乗せ、有期契約での一定期間の雇用の確保など)。
 
従業員が応ずる限度で面談し、条件について詰める。

*従業員から明確に拒否された場合は、直ちに中止してください。意思に反して退職勧奨を続けると、違法となる余地があります。具体的には、専門家に御相談ください。
*書類の利用についての一例

4 合意退職の意思確認の重要性

 合意書を作成しても、その後、「退職を強要された。合意は無効である」として、争われる余地はあります。
 このようなトラブルを防ぐためにも、毎回、面談の記録を残し、また、威圧的とならないよう、会社側の面談者を複数とするなどの工夫が有効だと思います。
 さらに、近時、メンタルヘルスと関係して、労災申請や損害賠償請求の対象となることが増えています。「退職強要が原因で、うつ病になった」です。
 このようなトラブルを予防するためには、慎重な意思確認が大切になります。

5 弁護士の活用方法

 まず、状況をお聞きして、自主退職という選択肢を含め、対応方針についてアドバイスすることができます。
 また、実際に、自主退職の促しを始めるとなった場合のスケジュール、面談の方法、交渉方法、合意書の作成までバックアップし、お手伝いすることができます。
 トラブルが予想される場合には事前に準備を行い、トラブル発生時には、弁護士が、会社側の代理人として、従業員さんと交渉することも可能です。

【解決事例】

 ある会社の従業員さんは、ベテランでしたが、業績が長年芳しくありませんでした。業務中の居眠り、得意先を怒らせるなどのミスも続いていました。
 就業規則がないため、定年を待って退職とする、という対応はできない事案でした。
 経営者とその従業員さんは話し合いを続け、従業員さんの希望を踏まえて、最終的に、条件について合意し、自主退職に至りました。
 弁護士は、面談への同席し補足説明を行い、合意書を作成いたしました。

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